Music Collections 作曲集

- Move -

「Move」現代音楽

「Move」に込められた狙い

 まず初めに、現代音楽におけるソロ曲(単独の演奏者によって演奏される楽曲や楽曲)の現状について、現代音楽作曲家の立場から少しだけお話をさせて頂きたいと思います。

 フルート、ヴァイオリン、ピアノなどのソロ曲というのは、古くから数多くの作曲家により活発に作曲活動が行われており、既に多くの名曲が存在しています。

 特に、フルート、ヴァイオリン、ピアノとなると、「徹底的に試行錯誤され生み出された名曲」が多く、純粋な器楽曲としては、そこから“新しい音楽を搾り出すことが出来ない”ため、「作曲意欲が湧かない」や、「名曲に対抗することが怖くて作曲出来ない」といった作曲家も多く存在するほどです。

 そのような現代ソロ曲の状況において、今回作曲した「ソロヴィオラの曲」というのは、比較的に作品数の少ない楽器となります。

 それは、ヴィオラが、「ヴァイオリンやチェロと音域が重なる」または「見た目がヴァイオリンと酷似している」ため、日常からクラシック音楽に触れていらっしゃらない方にとっては「ヴァイオリンとの見分けが付かない」ことも多い、「知名度が高い」とは言えない楽器だからです。

 しかしながら、ヴィオラは、たとえ「音域が重なり、他の楽器が同じ音程の音を出せる」ような楽器だったとしても、ヴァイオリン、チェロでは「絶対に届かない独特の音色」を持ち、特に最低音から5度上の音までは、「他の楽器では代役を務めることができない」ほどの独自の音を響かせます。

 そのような音色に特徴を持つヴィオラのソロ曲である「MOVE」はC線を多用し、弦楽器特有の柔軟に対応できるグリッサンド(一音一音を区切ることなく、隙間なく滑らせるように流れるように音高を上げ下げする演奏技法)を最大限に引き出せるよう作曲に取り組みました。

観賞ポイント

 クラシック音楽(現代音楽も含め)は、「生演奏が基本となる音楽」ですので、私は以前より聴覚で感じる音楽と共に、視覚で感じる「演奏者の身体的な動き」についても深い関心を持っていました。

 特に弦楽器は、オーケストラの楽器の中でも「ダイナミックな身体的表現が可能」となる楽器で、その演奏者の所作(振る舞い)は「音にも勝る美しさ」を見るものに印象付けます。

 「Move」では、ただ耳から入る音を楽しむのではなく、「演奏者の身体的な動き(MOVE)」についても意識して作り上げていますので、是非、演奏を聴かれる方は演奏者の動きにも注目して頂きたいと思います。

「Move」の音楽的要素

 「Move」は三部から成るヴィオラソロ曲です。

第一部

「Move」第一部の楽譜

 第一部では、冒頭からこの曲全体を支配するテーマ的な要素の強いフレーズから始まります。ただこのフレーズは展開され発展するような事は無く、曲全体のシンボル的な役割を担っています。

第二部

「Move」第二部の楽譜

 第二部は、第一部の曲想を引き継いだ楽章です。ヴィオラのC弦、グリッサンドが中心的な要素とし、リズミカルな音楽を形成していきます。

 また、音を粒子のように細かく散りばめる事で、“揺れ動く音の層”を作るイメージを盛り込んでいます。

第三部

「Move」第三部の楽譜

 第三部は、旋律的要素の強い楽章です。ゆったりとした旋律線と共に、時おり以前の楽章の断片的な要素が織り込まれています。

演奏場所

 アントワープ(ベルギー)
 The International composition competition 2013 solo viola by SORODHA コンクール本選会

演奏者

 ・百留敬雄

楽器・構成

  • Solo Viola

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Flow

Flow イメージ

Flow 概要

 「第81回日本音楽コンクール」2位入賞となった「Flow」は、変化する音のFlow(流れ)を、オーケストラとして表現するために作曲された楽曲です。

 「無数の短い音の線」が集積していく過程で、様々な形へと変化し表情を持ち始め、変わりゆく表情は音に流れを持たせ、寄せては返す音の流れに耳を傾けて頂けると幸いです。

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