Music Collections 作曲集

- 瀬戸内海 Seto Inland Sea -

 第3回高松国際ピアノコンクールが開催された2014年は、瀬戸内国立公園がちょうど80周年となる“節目の年”となっていた事から、「瀬戸内海」をテーマにし作品として書き上げました。
 ※ 上の演奏映像は、「委嘱作品演奏賞」を受賞した、ベラルーシ出身のアンドレー・シチコ氏によるもので、再生「1分~8分20秒」辺りまでが「瀬戸内海 Seto Inland Sea」を演奏しています。

瀬戸内海イメージ写真

作品概要

 第3回高松国際ピアノコンクール委嘱作品「第三次審査課題曲」
 ⇒ http://www.tipc.jp/

「瀬戸内海 Seto Inland Sea」の特徴

 「瀬戸内海 Seto Inland Sea」は3つの構成から成り、それぞれ3つの構成は明確な特徴を持たせています。

第一部

 1部では、小島が数多く点在している「瀬戸内海“特有”の潮の流れ」をテーマにしています。

 緩やかだった潮の流れが小島にぶつかり分断される事で新たな潮の流れを形成し、再び形成された流れは別の流れと衝突し、反発し合い、吸収し合い、また新たな流れを作っては小島に分断され複雑に絡み合っていきます。

 そんな瀬戸内海が見せる、不規則で有り予想が付かないような潮の流れに、思わず飲みこまれてしまう“人の感情”を表現しています。

第二部

 2部は、「キラキラと光る瀬戸内の海面」をテーマにしています。

 穏やかな風の日、日の光に照らし出された瀬戸内海の海面は、無数の小さなダイアモンド1つ1つが“キラキラ”と潮の流れに身を任せるようにして輝きを放ち、その輝きの中に、時折、思わず目を覆いたくなるほどの眩い光を見せるものが有ります。

 その光の1つ1つは、穏やかである波にも関わらず何処か悲しく、何処か遠く、私の心を包み込みます。

 そんな、瀬戸内の自然が何千年、何万年と繰り返してきた光を、ピアノの旋律として再現したものを2部で表現しています。

第三部

 3部は、勇ましく雄大で有り、莫大な力を持っている瀬戸内海を、圧倒的な力強さと爆発的なエネルギーを持って表現しました。

 瀬戸内海は、本州と四国の間に位置するため、通常は穏やかな波が海水浴客を満面の笑みを持って歓迎しますが、時として自然の刃が大きな荒波として人々の思いを飲みこみます。

 連続したリズミカルなパッセージ(楽節)が、徐々に小さな波を大きな波へと成長させ、轟音を轟かせて押し寄せます。

 しかし、そんな激しい自然の刃が通り過ぎると、西の空の雲間からは再び優しい日の光が指し、瀬戸内海は今までに見た事の無いような輝きを放ち、人々が暮らす街全体を照らし出します。

「瀬戸内海 Seto Inland Sea」に込められた狙い

 瀬戸内海は、流れが穏やかで落ち着いた海ですが、時に、力強く、そして荒々しい一面を見せる事が有ります。

 そんな、瀬戸内海の持っている様々な表情を、聞き手の頭の中のスクリーンへと“リアル”に映し出す事を目的にしています。

観賞ポイント

 大きく表情を変えていく瀬戸内海を目の前にして、聞き手である「あなた」の自身の“心情”や“思い”を全て「海面・荒波」に映し出して頂けたら幸いです。

作曲エピソード

 私自身、兵庫県の瀬戸内沿いで生まれ育ったという事もあり、幼少期から「海」と言えばイメージするのは「瀬戸内海」でした。

 しかしながら、まさか自分が「瀬戸内海」をテーマにした曲を作るなんて事は夢にも思っておらず、「高松国際ピアノコンクール」からのお話を頂いた時は、正直なところ最初は手さぐり感覚でした。

 そこで、今回作曲するに当たり香川県へと「瀬戸内海」のイメージを探しに行く機会を持つ事にしたところ、私が普段見ていた兵庫県側から見る「瀬戸内海」とは全く異なった表情を持っている事を知りました。

 それは、北から南(兵庫県側から香川県側)で瀬戸内海を見るのと、南から北(香川県側から兵庫県側)で瀬戸内海を見るのとでは、全く太陽の位置が異なり、これまで「逆光が普通」だと考えていた瀬戸内海を「順光で見る事」になったためです。

 順光で見る瀬戸内海は、逆光では見る事ができないような煌き(きらめき)を放ち、時に切なく私の人生そのものを海面へと映し出しました。

 そして、多角度から見る事で得た「私の感情」と共に「“瀬戸内海”が持つ表情を作品に込めたい」と言う思いを持つ事になり、制作に没頭する事で「瀬戸内海 Seto Inland Sea」は誕生しました。

「瀬戸内海 Seto Inland Sea」の音楽的要素

 前述しておりますが、「瀬戸内海 Seto Inland Sea」は3部から成ります。

第一部

「瀬戸内海 Seto Inland Sea」第一部の楽譜

 1部は、「潮の不規則な流れ」を表現する為に、鋭く短い音素材や方向性の持たない音楽で構成されています。

 しかし、その一方で散りばめられた音たちは徐々に方向性を持ち、1つの大きな流れを作っていきます。

第二部

「瀬戸内海 Seto Inland Sea」第二部の楽譜

 2部では、「キラキラ光る海面」を表現する為に、まず始めに高速のパッセージ(楽節)を作りました。

 その後、海面が“一瞬”眩しく光るように、高速のパッセージの中からオクターブによる旋律線が瞬間的に出現します。

第三部

「瀬戸内海 Seto Inland Sea」第三部の楽譜

 3部では、これまでの部分とは異なり、水平方向に持続力を持った音楽です。

 小さな波では無く、大きなゆったりとした力強い音の波を形成していきます。

演奏場所

 サンポートホール高松(香川県)[2014年3月19日]
 : 第3回高松国際ピアノコンクール 第三次審査課題曲
 ⇒ http://www.sunport-hall.jp

演奏者

楽器・構成

  • Piano

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