Music Collections 作曲集

- EDGE String Quartet -

 二部の構成からなる「EDGE」は、音楽が1つの音から次の音へ移行する瞬間のEdge(鋭さ、端)をメインテーマとして掲げた作品で、音の一片一片が「鋭い破片となり集積していく様」をイメージして頂ければ幸いです。

受賞歴

 2013年 カジミェシュ・セロツキ国際作曲コンクール3位入賞
 2011年 第80回日本音楽コンクール2位入賞

「EDGE String Quartet」の特徴

 Edgeは英語で「鋭さ、端」を意味しますが、静寂の中に突如として鋭い音が現れたら、その力の大きさに誰しもが驚く事でしょう。

 例えば、ホラー映画などで主人公が恐怖するシーンでは、静寂の中に突然雷鳴が轟(とどろ)けば、それは見る者に息を飲むような緊張と緊迫感を与え、その静寂と音の強さのコントラストに物語は一気に加速していきます。

 その映画のような緊張感を楽曲へと取り込み誕生した作品が「EDGE」で、静寂に突如して生まれる音は、瞬間的にEDGE(端)を最大限に持たせ、できるだけ鋭く尖るようにする事で、聞き手に映画の緊迫感に似た感情を聴覚から得られるようにしています。

「EDGE String Quartet」に込められた狙い

 「EDGE」は、二部の構成から成り、それぞれに「EDGE」としての狙いが込められています。

第一部

 一部は「間」と「強い持続音」の移行の瞬間を重要な要素としています。

 「間(静寂)」は鋭く切り裂く音の出現により瞬時に断絶され、ViolinのG線、CelloのA線が作る「molto vibrato(非常に揺れる)」 の「強い持続音」が徐々に間を壊していく事で、散りばめられた音楽は「持続性」を持ち始めます。

 また、その間を壊していく「持続音」は単なる「forte(強音)」の持続音ではなく、弦楽器が作りえる極限の「強い持続音」とする事で「EDGE」が更に理由を持ち始め、そして、「持続音」が限界を超えた時に突如して楽曲を移行させる事で、聞き手は次の「EDGE」を探し始めます。

第二部

 二部では一つ一つの「glissando(弦上で指を迅速にすべらせる奏法)」による音の移行が作る“うねり”に重点が置かれています。

 点描的な音楽のように音の点で流れを作るのでは無く、個々の点を短い音の線に変化させ、そこに「glissando」による“うねり”を与える事で「EDGE」が意味を持ち始めます。

 更に「glissando」を、ただ音が直線的に移行するものでは無く、書道の筆が描く『はね』や『はらい』のように「Edge(鋭いもの)」にする事で、曲は静寂も持ち合わせる事になります。

 また、常に曲のテンポを変更する事により、直線的な曲は『はね』や『はらい』の曲線的要素を持ち始め、それは極めて微細な変化による濃淡をもたらし、その音が何重にも織り込まれ、その中から時おり旋律が生まれる事で、音響は絵画を描いていきます。

観賞ポイント

 静寂な世界に突如、稲妻が落ちるような衝撃、間の後に、音の入る瞬間のEDGE、無数の短い線のEDGEが作り出す音の緊張感とグラデーションを感じながら、1つ音を追いかける事で周りの世界が暗くなっていくイメージを受け取って頂けると幸いです。

作曲エピソード

 作曲中に最も拘りを持ったのは、前半部に導入している『間』についてです。

 「Edge」を際立たせるためには、どうしても『間』を徹底的に追求していく必要が有り、『間』が長すぎると聞く手を退屈な世界へと誘導してしまい、短すぎると「Edge」としての緊張感が楽曲に盛り込まれません。

 長期の試行錯誤により、最も緊張感が高まる『間』の長さを探り出し、さらに、『間』の前後に流れる事で「最も緊迫感を生み出す音」を探りだす事で、「Edge」が意思を持たせる事に成功し「Edge」は誕生しました。

「EDGE String Quartet」の音楽的要素

 私の作曲のコンセプトの1つでもある、「短い線の集積から成る音」という考えをもとに作曲し、無数の鋭い破片が集積し、音響を形成していきます。

演奏場所

 東京オペラシティコンサートホール(日本)
 : 第80回日本音楽コンクール本選
 ⇒ http://www.operacity.jp/concert/

 ヒガシマル醤油の醤油蔵(日本)
 : 刻の記憶 3周年記念コンサート
 ⇒ http://www.higashimaru.co.jp/enjoy/museum/

 Lutoslawski Polish Radio Concert Hall(ポーランド)
 : カジミェシュ・セロツキ国際作曲コンクール受賞者演奏会
 ⇒ http://www2.polskieradio.pl/studio/lutoslawski_en.aspx

指揮者

 板倉康明(東京オペラシティコンサートホール)

演奏者

 東京シンフォニエッタ(東京オペラシティコンサートホール)
 ⇒ http://orchestra.musicinfo.co.jp/~ts/index.html

 Violin1 井上隆平, Violin2 小野村友恵, Viola 三木香奈, cello 池村佳子(ヒガシマル醤油の醤油蔵)

 DAFO Quartet(Lutoslawski Polish Radio Concert Hall)
 ⇒ https://www.facebook.com/pages/DAFO-QuartetKwartet-Smyczkowy-DAFO/242450075883161

楽器・構成

  • Violin I
  • Violin II
  • Viola
  • Violoncello

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