Music Collections 作曲集

- Flow -

 「第81回日本音楽コンクール」2位入賞となった「Flow」は、「Flow(流れ)」を音楽によって表現しており、無数に飛び散った短い音の線たちが、様々な形状に集まったり離れてたりしながら変化していく流れを感じて頂ければと思います。

受賞歴

 2012年 第81回日本音楽コンクール2位入賞 (楽曲 Flow for orchestra)

「Flow」の特徴

 「Flow」もまた、「短い線の集積で作る音の流れ」という作曲のアイデアをコンセプトにして作られており、無数に飛び散った短い音の線が、様々に変化し音にFlow(流れ)を生む様子を描いた楽曲です。

 例えば、床に落としてしまったグラスが砕け散る際、そこに映る情景は全てをスロー再生のようにイメージ作られ、砕け散った破片はゆっくりとした方向性を持ったまま一見して無意志のように宙に散らばります。

 その宙に散らばった破片一片一片に対して、再び違う意思を与えたならば、今度は逆再生のように再び吸い寄せられた破片は、新たな形を作っていくはずです。これが「Flow」です。

「Flow」に込められた狙い

 「Flow」三部の構成から成っています。

第一部

 一部は導入的な要素の強い楽章で、「間」を重要な要素とし、鋭く切り裂く音の出現により、徐々に音楽は持続性を持ち始めせるよう構成されています。

 「間」を重要視する事により、切り裂いた音が聞き手に興味を抱かせ、「新しく手に取った本のページをめくる様な感覚」を与えるようにしています。

第二部

 二部はこの曲の中心的な楽章で、無数の短い線の流れの集積により、長い線が形成され音響が作られていきます。

 ここで使われている短い線には「glissando(弦上で指を迅速にすべらせる奏法)」や装飾音を用いて“うねり”をつけ、テンポを変調させる事により、短い線の弱さを際立たせると曲面部を生みだし、さらにそれらを集積させる事により、聞き手にとって太い線が意識的に描き出せるようにしています。

第三部

 三部では、二部から続く六連符の律動を中心にして、弦楽器のユニゾン(複数の楽器が同じ音を奏すること)が「長い線の持続」を作り出しクライマックスに向かいます。

 聞き手に対して「Flow(流れ)」を見せる事ができるのか?作曲者だけでなく演奏者にとっても曲全体の集大成となるよう構築しています。

観賞ポイント

 無数の短い線が空中へと飛び散り、再び意思を持ち集積する事で、息の長い音楽へと変化し、膨大な持続力を持ち、「Flow」を持つ様子を感じて頂ければと思います。

作曲エピソード

 「Flow」は、「弦楽四重奏曲EDGE」で使用した『短い線の集積で作る音の流れ』のコンセプトを引き継ぎ、さらにそれをオーケストラとして表現させてみる事に挑戦した作品です。

 そのため、作曲においては「どのようなオーケストレーションにするか?」を試行錯誤し、最終的に「Flow」を生み出せる事を確認した時には、長期間に渡る実験を行っていました。

「Flow」の音楽的要素

 「音」事態は、細かい要素(短い線)から成っていますが、短い線が無数に集積する事で1つの長い線を形成すると、粘りの強い持続性を持たせるように構成しています。

演奏場所

 東京オペラシティコンサートホール(日本)
 : 第81回日本音楽コンクール本選
 ⇒ http://www.operacity.jp/concert/

指揮者

 渡辺一正
 ⇒ http://watanabekazumasa.seesaa.net

演奏者

 東京フィルハーモニー
 ⇒ http://www.tpo.or.jp

楽器・構成

 オーケストラ

Recommend Music 推奨曲

EDGE String Quartet

EDGE String Quartet演奏風景

EDGE 概要

 作曲家の登竜門である「音楽情報第80回日本音楽コンクール」で2位入賞を果たした「EDGE」は、「静寂の中に突如として現れる激しい音の可能性」を体験して頂きたい一曲です。

 曲は二部構成から成り、音楽が1つの音から次の音へ移行する瞬間のEdge(鋭さ、端)をメインテーマとして掲げた作品でも有り、音の一片一片が「鋭い破片となり集積していく様」をイメージして頂ければ幸いです。

ANIMA

ANIMA イメージ

ANIMA 概要

 「ANIMA」はイタリア語で『魂』、「ANIMATO」は音楽用語で『生き生きと』を意味し、ウィーンコンチェルトハウス100周年作曲賞最優秀作品賞を受賞した楽曲です。

 バラバラに飛散した「魂」が1点に集中していく中で「音の方向性」を与え、その結果、曲全体に一定の方向性が生まれ、聞き手にとって有りがちな「現代音楽は理解が難しい」と言う課題にも挑戦した作品でもあります。

To page top ページの先頭へ