- Rewire -
「Rewire(再配線・新しい配線を提供する)」は3部作からなる第1作目で、それぞれ、「Rewire」フィリピンと日本、「Rewire II」 はスペインと日本、「Rewire III」はポーランドと日本、と言う構成要素を持ち、多国間に渡る「文化的な再配線(Rewire)」を大きなテーマとして掲げた作品になります。
現在では、インターネットや通信技術の発展により、世界中の作曲家によって作られた楽曲や歌い手により歌い上げられた音楽を、誰でも手軽に聴ける時代になりました。
しかし人々は、「世界に存在する沢山の音楽へのアクセス権」を持っているにも関わらず、その権利を行使しようとはせず、実際に聴く音楽と言うのは「個人の興味に左右されたものばかり」となってしまっているのが現状です。
そのため、どうしても「偏った音楽しか聴かない人々」は増加傾向にあり、さらに、コミュニケーションツールやソーシャル・ネットワーキング・サービスなどを利用し「同じ興味や趣味を持った者を探すこと」が容易になってしまったことから、こうした動きは加速の一途を辿っています。
そんな現代社会において、「新たな音楽、文化を知る機会」を意図的に作り、世界単位で偏ってしまった音楽に対して、再び繋がりを与える(Rewire[再配線])事を、本楽曲は背負っています。
「Rewire」の特徴
「Rewire」は、アジアの儀式(東南アジアの民族的な儀式、日本の神事、祭事など)からインスピレーションを受け作曲しました(※ ここでの儀式は特定のものはありません)。
ソリストは常に曲の中心を作り、儀式の中での“シャーマン(超自然的存在と直接接触・交流・交信する役割を主に担う役職。呪術者・巫・巫女・祈祷師・ムーダン)”の様な役割を果たしてオーケストラを誘導していきます。
「Rewire」に込められた狙い
協奏曲の場合、「ソリスト(独奏者)とオーケストラの関係をどういったものにするか?」様々なパターンや構成が考えられ、例えば、「ソリストを引き立てるようなオーケストラ音楽」、「ソリストに負けず主張の強いオーケストラ音楽」と言うようなものがあります。
そんな中、今回は「フィリピンの子供達の前で演奏される」という事が事前決定していたこともあり、「演奏を聴いた子達が“ヴァイオリンを演奏したい”と思えるような曲」を作ることにし、「ソリストが前面に出て活躍する協奏曲」を作曲することにしました。
観賞ポイント
「Rewire」は演奏会の企画上、「子供達に聴いて貰う機会が多い」と言うことが想定されていたため、楽曲を聴いた子供達の反応についても観賞ポイントとして挙げさせて頂きたいと思います。
また、曲中では随所に現れる「日本的・アジア的な響き」から、日本の音楽、アジアの音楽、そしてもちろん文化にも興味を持って頂ける事を願っています。
作曲エピソード
今回の演奏は、フィリピン各地で演奏する事になる為、「演奏条件の悪化」、「練習時間の不足」など様々な不足の事態が予想されました。
そのため、アクシデントにより「楽器、奏者」が抜けてしまうような事があっても、「曲として成立する」よう作曲の構想段階から深く練り込みました。
「Rewire」の音楽的要素
第1部:ソロヴァイオリンの高速のパッセージを中心に、オーケストラが長い旋律線を形成していきます。
第2部:ソロヴァイオリンのゆったりとした旋律線を中心に、オーケストラが色彩を加えていきます。
第3部:ソロヴァイオリンの誘導により、これまで静寂を保っていたオーケストラが徐々に活気を持ち始め、曲の中心を形成していきます。この曲の中心的な部分で、一種のトランス状態状況を作り出した中での終演を迎えます。
演奏場所
2014年8月23日~9月15日
フィリピン マニラ・セブ: UUUオーケストラプロジェクト2014
指揮者
・木許裕介
ヴァイオリンソリスト
・白小路紗季 ヴァイオリンソロ
演奏者
・UUUオーケストラ
・Manila Symphony Orchestra
・Cebu Philharmonic Orchestra
楽器・構成
ヴァイオリン協奏曲
EDGE 概要
作曲家の登竜門である「音楽情報第80回日本音楽コンクール」で2位入賞を果たした「EDGE」は、「静寂の中に突如として現れる激しい音の可能性」を体験して頂きたい一曲です。
曲は二部構成になっており、音楽が一部から二部へと移行する瞬間のEdge(鋭さ、端)をメインテーマとして掲げた作品でも有り、音の一片一片が「鋭い破片となり集積していく様」をイメージして頂ければ幸いです。