ジュネーブ国際音楽コンクールによせて イベント情報のイメージ

- ジュネーブ国際音楽コンクールによせて -

「ジュネーブ国際音楽コンクールを最後にする」
 今回のコンクールは、これまでとは全く違う“強い思い”のもと取り組んだものでした。

 私にとっての弦楽四重奏は、オーケストラのように音色が豊かなものでは無く、音に対しての装飾も限られるため、「曲に嘘が付けない」と言う部分がある一方、「自分のやりたいことをストレートに表現するには、これ以上のものは無い」と言う特別な編成になります。

 そのため、「弦楽四重奏の作曲をコンクールの集大成」と位置付けることで、自分自身の持つ音楽の表現を根本から見つめ直し、極限まで研ぎ澄ませることにより作曲が始まりました。

 受賞作品のBillowは、私が作曲のテーマとしている『短い線の集積で作る音楽』と言う考えを更に拡大解釈し、「『短い線の集積から作る“うねり”』を表現したい」と言う思いが込められており、曲中、常に「音」は一音から始まり、短い音階やグリッサンド(一音一音区切ること無く音階を上げ下げする演奏技法)を使用し、広がり、違う一音へと集積し、その過程の中で“うねり(Billow)”を形成していきます。

 そして、その時に生み出される“うねり”は、『同種楽器』により構成された弦楽四重奏でしか表現することができず、お互いの音が溶け合うことができる演奏家による高度なアンサンブルでのみ再現できるよう構成されています。

 今回のコンクールでは、「演奏者を作曲者自身が選択できない」と言う規定により行われていましたが、幸運なことに、私の曲を担当して頂いたのは坪井悠佳さん率いる『ガラテア弦楽四重奏団』となり、坪井さんのサポートのもと、深い音楽観の共有ができ、私がイメージする楽曲の世界を予想以上の形で表現して頂けることができました。

 受賞は、彼ら演奏者の方々をはじめ、多くの皆様の支えが無ければ叶うことは決してありませんでした。心より感謝致しております。

 また、今後は、このジュネーブ国際音楽コンクールを起点にして「新しい音楽へも挑戦していきたい」と考えておりますが、どのような形であれ、皆様が楽曲の一端に触れて頂けるのであれば、作曲家としてこれ以上の幸せなことはありません。

 最後に、繰り返しとなりますが、私を支えて下さっている全ての方々に心より感謝申し上げます。

- 薮田翔一 -

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